本記事は、「薬いらずで認知症は防げる、治せる」の著者である佐藤先生の本の内容で私自身がためになった部分を書き出しています。私自身が書いた言葉では無い点をご注意ください。
誰もが認知症にはなりたくないと思っています。しかし、いくら気をつけていても、65歳以上の4人に1人が認知症およびMCI(軽度認知障害)になる時代です。「絶対に自分だけは大丈夫」などといっている場合ではないのです。
一般的に、病気の予防というと、病気のリスクを避ける、リスクをゼロに近づけることだと考えるかもしれませんが、それは、守りの予防医療です。誤解を恐れずにあえていいますが、いろいろな「ボケ防止法」を行っても、認知症になるときはなります。抗酸化食品をたくさん摂って、規則正しい生活をして、免疫力アップに努めても、がんになるときはなるのと同じです。
だからこそ、画像診断を適切な頻度で行うことで、いち早く認知症の「芽」を発見することが重要なのです。これこそ攻めの認知症予防だといえるのではないでしょうか。
とはいえ、一般的な病院でそれを行えば十分かといえば、そうとは言い切れません。認知症の検査で脳PET検査を行っている医療機関は、極めて少ないのが現状で、一般には保険適用範囲内の検査しか行っていません。
また、脳PET(FDG-PET)検査では、解剖学的標準化された脳画像からデータ抽出を行い、正常データベースと比較して統計解析(3D-SSP解析)を行う必要がありますが、そのシステムを有していないため、検査ができないという医療機関がほとんどです。
診断機器の性能は日々進歩していますが、現実には、最先端の画像診断機器を導入している施設は、それほど多くはないのです。
みなさんも医療機関を選択する際には、このように設備機器が整っているかどうかも重要なポイントとして判断してみてください。
MCIは、日常生活に支障がなく、全般的な認知機能も保たれているが、本人または家族から見てもの忘れの訴えがあり、客観的にも記憶障害があるといった状態ですが、脳PET検査は、理想的にはこうした症状が出現する前から適切な頻度で行うことが望まれます。つまり、がん検診と同じように、一定年齢(50歳代くらい)になったら、脳の検査も必要だということです。
最近の研究では、「運動」と「睡眠」が、アルツハイマー病の進行を防いだり、予防につながる、という報告があります。
例えば、アルツハイマー病になると、脳の中央に位置する海馬が、加速度的に縮小していきますが、運動することによって、その海馬が大きくなることが確認されています。また、海馬の萎縮や神経伝達組織の機能低下は、先述したように、アミロイドβやタウといったタンパク質が脳に蓄積したり、過剰なリン酸化によって起こると考えられていますが、運動をするとアミロイドβを分解するネプリライシンという酵素が活性化されて、アミロイドβの蓄積を防ぐと報告されています。
『この内容はリコード法でも同じような見解です。』
運動と並んで、アルツハイマー病の予防に効果があると考えられているのが、睡眠です。では、いったい、睡眠とアルツハイマー病との間に、どのような関係があるのでしょうか。
睡眠中の脳内では、記憶の定着・整理をはじめ、トリプトファン(アミノ酸の一種)などの脳に必要な成分を取り込むなど、人間の体にとって必要不可欠な働きが行われています。そうした脳の活動のひとつに、老廃物の排出があります。
日中の活動で生じた脳の老廃物は、脳脊髄液が循環して回収していますが、その老廃物の1つがアルツハイマー病で蓄積が確認されているアミロイドβです。ですから質のよい睡眠をとらないと、アミロイドβが脳の中に溜まりやすくなってしまい、アルツハイマー病の発症を促進したり、より悪化させてしまうことになると考えられます。
これについて、睡眠とアルツハイマー病との関係を研究するアメリカのワシントン大学の研究グループは、睡眠効率の悪い人は、最大で5倍以上も、初期のアルツハイマー病になる可能性が高いと指摘しています。
一般に、高齢になるほど、睡眠の質が低下しますが、睡眠の質を改善することが、アルツハイマー病を遠ざけるうえでも、とても重要だということです。