早期発見、早期治療が重要な若年性アルツハイマー型認知症

この症例の男性は、物忘れが多くなってきたことを実感していたそうです。
お父さまが認知症で、自分も若年性アルツハイマー型認知症ではないか不安になり、受診に至ったとのこと。

今回も、私が認知症のことを知るために初めて手に取った書籍の著者、宇都宮セントラルクリニックの理事である佐藤俊彦先生の書かれた本からのお話をご紹介します。

もしや自分も・・・認知症!?

【ケース 2】若年性アルツハイマー型認知症 青山 宏一さん(仮名)・初診時55歳・男性

認知症のリスクを疑うことから

これまで病気らしい病気をしたことがないという青山宏一さん。
「俺は、健康にだけは自信がある」という口癖のとおり、会社では部長職を任され、まだまだ働き盛りといわんばかりに、精力的に仕事をこなしていました。
しかし、そんな青山さんにも、ひとつ気がかりなことがありました。それは、同居している父親が認知症を患っていることでした。
自分も遺伝的に、認知症のリスクをもっているのではないか?知らぬ間に、進行していたらどうしよう。介護で、家族に迷惑をかけたくない。定年後にやりたいことも、まだたくさんある……。不安は、どんどん募っていったといいます。

早期の画像診断(MRIとPET)が重要。その結果は?

青山さんのMRIとFDG-PETの画像ですが、MRIでは、まだ海馬が萎縮しておらず、何の変化もないように見受けられます。しかし、FDG-PETの画像では、連合野での薬剤の集まりが悪くなっていて、糖代謝が低下していることがわかります。
また、脳内の血流量の変化をみるため、MRI測定を行いましたが、血流の異常は認められませんでした。この結果、青山さんは、MRIで症状を感知できる段階ではない、ごく早期の若年性アルツハイマー型認知症であることがわかりました。

脳PETによるアルツハイマー型認知症の早期発見がカギ

青山さんはその後、進行抑制薬を服用し続けることで、病気の進行を抑えながら、今も元気に生活しています。もし、脳PET検査を受けずに、症状が進んでいたら、奥様やお子さん、一番大切な家族に大きな負担をかけてしまう可能性が高かったのです。
検査に踏み切った青山さんの勇気が、手遅れを回避したといえるでしょう。

MRIの結果だけで認知症の診断を下すのは危険です

症例男性、青山さんの診断画像

症例男性の画像診断の結果

この症例の男性は、もの忘れが多くなってきたことを実感し始め、「これは認知症の兆しではないか」と自身を疑いました。そして、詳しく検査のできる医療施設を探して、佐藤先生のいらっしゃる宇都宮セントラルクリニックを受診したそうです。
その結果、ごく早期の若年性アルツハイマー型認知症であることがわかりました。
ごく早期であるのに、なぜ発見できたのでしょうか??

それは、このブログで繰り返しお伝えしているPET検査を、MRIと同時におこなったからです。

症例男性のMRIの診断画像には、アルツハイマー型認知症の進行期に見られる海馬の萎縮は認められません。

画像診断に積極的でない病院だと、MRIの結果だけで認知症の診断を下すこともあるはずです。
今回のケースだと、「加齢による物忘れですね」との診断になるのではないでしょうか。

医者が言うのだから、とその言葉を信じて一安心。しかし、密やかに、でも確実に認知症が進行して気づいた時には手遅れになっていた・・・これは十分あり得る話です。

  • MRIは、脳の構造上の変化を知ることができる画像診断です。

    認知症の初期だと、加齢による萎縮なのか認知症による萎縮なのかの区別はできません。

  • FDG-PETは、脳の血流低下や代謝異常の状態がわかる画像診断です。

    FDG-PET検査とは、ブドウ糖に似た「FDG」と呼ばれる物質に放射性同位元素をつけた薬剤を投与し、FDGが多く集まる部位を画像から特定することで診断する検査。この薬剤の集まりが悪いところは糖代謝が悪いということになります。脳の糖代謝が落ちているということは、脳神経細胞が死んでいるか、機能低下状態ということになるのです。アルツハイマー病に特有の血流低下や代謝異常が、初期の認知症やMCI(軽度認知機能障害)でも見つけることができるので認知症診断の有力な決め手の一つになります。

このことから、認知症の診断にはPETによる画像診断が有効であることをお分かりいただけると思います。
このブログ内でもPETについて触れています。お時間がある方は良かったら読んでみてくださいね。
認知症検査・診断の真実認知症医師・病院の真実

わたしは、画像診断するときに大切なことは、PET検査とMRI検査を組み合わせることだと思っています。
このブログを読んでくださっている皆さまは、親しい方に検査の機会あるときは、どうかPET検査をすすめてあげてください。

まとめ

いかがでしたか?
青山さんは、PET検査とMRIを同時に検査したことで、ごく早期の若年性アルツハイマー型認知症を発見することができました。そのおかげで、進行をを遅らせて普通の人とほとんど変わらない生活を送ることができています。

青山さんは、「もし自分が認知症だったら」という不安や恐怖心を抱きながら、それでも勇気をもって検査を受けました。
その後の自分の、大切なひとの人生です。いざと言う時にアルツハイマー型認知症を疑う勇気を持っていただきたいと思います。