認知症と被災

被災地の画像

2019年も間も無く終わろうとしています。振り返ってみると、大きな自然災害の多い1年だったと感じます。
首都直下地震も今後30年の間に70%の確率で起きると言われています。
災害大国と呼ばれる日本ですから、今後もどの様な災害が起きてもおかしくはありません。
避難を余儀されなくなった時、認知症の方々への対応はどうしてあげれば良いのでしょうか?

認知症の人が避難所生活で過ごすポイント

  • 静かな居場所の確保・工夫
    雑音が多い場所は落ち着かないので、奥まった場所を確保する
  • トイレのための工夫
    無理して本人をトイレに連れて行こうとしない。二重三重にした簡易ポリ袋の中に新聞紙や古い布きれを入れその中に排泄する、毛布や段ボールで本人の周りを囲うなど、本人が安心して排泄できるようにする工夫を。
  • 本人に心地よい刺激とリフレッシュタイムを
    不快が重なると、行動が落ち着かなくなりがちなのは健常者も同じ。不快感が募る前に、認知症の本人が気持ちいいと感じるマッサージなどを少しずつしてみる。
  • 本人が安心できる活動や情報を
    認知症の人は状況を把握することが苦手です。本人に今の状況を伝えないと、本人はどんどん不安や不満を募らせて落ち着かなくなっていきます。
  • 家族が自分の身と心をいたわる
    避難所では先が見えず、どうしたらいいのか家族も不安でいっぱいになり家族の表情が硬くなます。すると、本人は怒られているように感じて不安定になりがちです。家族の表情がやわらぐと、本人もほっと安心します。
  • 福祉避難所への早めの移動
    高齢者や障害者、妊産婦など特別な配慮が必要な人向けの避難所「福祉避難所」があります。避難所を運営する人や保健師さんなどと、本人の状態や意向をもとに福祉避難所に早く移るための相談をしましょう。

避難所では、静かな場所を確保できないことが多いのではないでしょうか。
配慮が必要な人用の専用スペースがない場合は、避難所を管理する関係者に要望したことで、設営された例もあるようです。
避難所はいろいろな人が出入りし、大勢の人が寝起きを共にせざるをえないので、ふだん健康な人にとっても厳しい環境です。時に認知症の方には、せん妄や混乱、体調悪化が起きてもおかしくない状況です。
良い場所の確保ができないときは、少しでも環境をよくするための工夫をしてあげたいですね。
例えば、本人の座る方向を人の動きの多い方とは逆に向けて刺激をできるだけ減らす、毛布や段ボールなど手に入るもので小さくても囲いをつくる、少しでも静かな場所へ本人を誘って気晴らしタイムをつくる、などです。
東日本大震災のとき、認知症の人が避難所で生活できる限界は、平均3.11日だったというデータがありました。一時避難で地域の避難場を利用しても、福祉避難所への早めの移動が望ましいと思います。

被災時の認知症の方への接し方

  • わかりやすい表現で、ゆっくりと話しゆっくりと聴く
    話す時には、 一度にたくさんのことを言わずに、短い文章で、1つ1つ伝える。
  • 今の状況を伝える
    認知症の方も本人なりに不安に思っています。今、何が起こり、どうしたらいいか、本人へ説明することで混乱させない様にします。
  • 飲食・排泄・睡眠のタイミングを知らせる
    他の人からの声かけや見守りがないと不安になったり混乱して、一人では何もできなくなり、認知症の症状や体調がさらに悪くなります。
  • 楽しみを見つけたり、体操や散歩で体を一緒に動かす
    座ったままだったり、横になってジッとしたままだと、足や腰の筋力が低下し歩けなくなったり、血流が滞り血栓ができてエコノミー症候群の危険性も。風邪などにかかりやすくなります。
  • 寒い、暑い、硬い、うるさい、眠いなどの不快感を取り除く
    不快感(例:寒い、冷たい、硬い、うるさい、熱い、眠い)がつのると、落着きのない行動や苛立ち、怒りの気持ちが高まり、抑えきれなくなります。
  • 何かを手伝ってもらう
    避難所で「何もすることがない」ことが、落ち着かない言動の引き金になることもあります。「じっとしていて!」ではなく、本人ができる範囲で手伝ってもらい、活躍できる場面をつくりましょう。

避難場生活では厳しい環境で、家族や周りの人間が余裕をなくし、あわたただしい雰囲気や口調になってしまいますが、それでは認知症の人はいつも以上に混乱してしまいます。大変な時に認知症の方とコミュニケーションをとることはいつもより工夫が必要です。
炊き出しや支援物資の荷下ろしなど、本人がみんなと一緒に汗を流すことで、本人が満足して落ち着き、周囲の人たちの理解も深まった避難所もあったそうです。
いずれにしても、認知症の人は状況を把握することが苦手です。それに輪をかけて、本人に今の状況を伝えないと、本人はどんどん不安や不満を募らせて落ち着かなくなっていきます。
「ここは、家の近くの◯◯だよ」「今、◯時。あと少しで夕ご飯になるよ」「明日は保健師さんが巡回にきてくれるんだって」など、本人にシンプルにやさしく伝えることが大切です。
忘れてしまうかもしれませんが、「自分にも説明してくれる」ということ自体が、本人の安心感につながります。

まとめ

いつ災害が起こるかもわからない日本に暮らすわたしたち。

高齢化社会になり、災害時の避難所で認知症の方々と過ごすことも当たり前にあることです。
避難所では大勢の人が寝起きを共にせざるをえないので、見ないふりや関わりを持たずに過ごすいう選択肢はないのではないでしょうか。認知症の方を、地域ぐるみで見守っていく姿勢が必要だと改めて感じました。認知症カフェなどの取り組みが広がれば、認知症への理解が深まり、認知症の方々とも関わりをもてるので、いざ被災した際にも戸惑いが軽減されると思いました。

助けあいのイメージ

参考元:なかまぁる

参考元:避難所でがんばっている認知症の人・家族等への支援ガイド