TBSドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』第2話

今夜放送される、TBSドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』の第3話の放送前に、第2話についてお話ししていきたいと思います。
今回も、「アルツハイマー型認知症」という視点からお送り致します。
放送をご覧になっていない方のためにも、まずはあらすじから。

『大恋愛〜僕を忘れる君と』第2話あらすじ

真司(ムロツヨシ)のアパートへ急ぐ途中、交通事故に遭ってしまった尚(戸田恵梨香)。病院へ運ばれ検査するも、幸い大きなケガはなかった。だが、偶然、尚のMRIを目にした侑市(松岡昌宏)は、尚の脳に軽度認知障害の兆候を感じ取っていた・・・。
交通事故に遭ったことなど気にしていない様子の尚が、真司と一緒にアパートで過ごしていると、侑市から連絡が入り会う約束をする。結婚を自分勝手に破談にしてしまったことに負い目を感じていた尚だったが、侑市がまさか自分の脳に起こっている異変に気付いたとは思ってもいなかった。
翌日、婚約解消の話を進めるつもりで侑市に会った尚は、軽度認知障害の疑いがあると聞き、簡単な“物忘れ検査”を受けることに。
一方、尚の母・薫(草刈民代)は一人で真司のアパートを訪ねていた。そして「娘と別れてほしい」と真司に手切れ金の入った封筒を手渡し…。

というのが、第2話のあらすじでした。

第2話で、わたしが気になったこと

侑市先生(松岡昌宏)の病院を訪れた尚(戸田恵梨香)。
すでに約束の時間は過ぎていました。

「このごろ、約束を忘れてしまったりすることあるかな?例えば、ずっとクリニックに来ている患者の名前や存在を忘れてしまったり。買い物したのを忘れて、何度も同じものを買ってしまったりとか。」と切り出す侑市先生。
「それはつまり、私に若年性アルツハイマー病の疑いがあるということでしょうか」と、尚。
アルツハイマー型認知症の、最先端の研究者である侑市がそこまで言うなら、と尚は検査を受けることになりました。

若年性アルツハイマーを疑う侑市

侑一先生の指示で、尚はたくさんの検査を受けました。
長谷川式認知症スケール、スペクト検査(脳の血流、代謝の状態を調べる検査)、アミロイドPETなどと見受けられました。
侑一先生はさすが、アメリカで学んだ最先端の研究者だと思いました。

若年性アルツハイマー病と診断された50歳の言語学者の苦悩と葛藤、そして彼女を支える家族との絆を描く人間ドラマ「アリスのままで」という映画の中で、主人公のアリスが最初に受けた検査もPETでした。

アミロイドβPET

劇中では「アミロイドβPET」と言われていましたが、当ブログでこれまで「PET」といってきたのは佐藤俊彦先生の著書にある「FDG-PET」のことを指してきました。

どちらも同じでは?と思う方も大勢いらっしゃると思います。
「アミロイドβPET」と「FDG-PET」、このふたつは何が違うのでしょうか?

アリスのままでジャケット

「アミロイドβPET」と「FDG-PET」の違いとは?

アミロイドβの沈着状態を調べる「アミロイドβPET」

アミロイドβPETでは、アミロイドβに結合するくすりを使用して、アミロイドβの脳内沈着状態を画像にすることが出来ます。
認知症状が現れる何年も前に脳内にアミロイドβの沈着がはじまるというのが原因説の主流です。
そして続いてシナプス機能障害、神経細胞障害、脳萎縮が認められ、認知症状が出現するとされています。

脳機能をみることができる「FDG-PET」

脳内のどの部分の脳機能が落ちているかを画像にすることができ、症状との関連性を説明しやすくなります。
アルツハイマー病の脳をFDG-PETで画像化すると、脳に糖代謝の低下が見られます。
糖代謝の低いところは、脳機能の低下を反映していることになります。

侑一先生が、尚の脳にアミロイドβの沈着を認めます。
「診断はMCI、アルツハイマー病の前段階です。」と告げます。
「アミロイドβが脳に溜まっているということは、つまりゆくゆくはアルツハイマー病を発症するということですか?」
と不安げに尋ねる尚に
「アミロイドβが溜まっているひとすべてが、アルツハイマー病になるわけではないんです。」と侑一先生が答えました。

アミロイドβの沈着が見られる場合でも、アルツハイマー病を発症しない人もいるため、現在も研究が進められています。このセリフは、アルツハイマー型認知症の根治薬が一つも存在しないという、アミロイドβ仮説への疑義を表した言葉の一つだな、と思いました。

PET

「治療法が無いわけですから、運を天にまかせろっていうことですよね。」と声を絞り出す尚。

「確実な治療薬は、残念ながら今の所ありません。」

この言葉に、驚かれた視聴者も多かったはずです。
わたしは、このブログでアルツハイマー型認知症には根治薬が無いと、繰り返し訴えてきました。
現在の日本で認知症の薬として処方されている薬は4種類ありますが、進行を抑える効果を期待するもので認知症が改善したり治ったりするものではありません。恐ろしいことに、ゆっくりと、確実に症状が進行し、やがて悲しい結末を迎えてしまうのです。

こちらのコンテンツに詳しく書いています。よろしかったら読んでみてください。
認知症治療薬の真実

確実な治療薬は、無い現実

まとめ

MCIの診断を受けた尚は家族に話し、そして真司にも打ち明けました。
非常に感極まる場面ですが、これは幸いにも侑一先生との出会いがあり、MCIの段階で発見されたから実現した場面です。多くの場合はそうはいきません。

侑一先生が尚に「アミロイドβPETは自費になってしまうのですが」と説明していた通り、早期に認知症を発見するためには、個人にとっては高額なPET検査を自費で受けなければなりません。なぜなら、MRIでは早期の認知症は画像化できません。PET検査を積極的に取り入れようとはしない病院もあるようで、MRIだけで診断された結果、発見が遅れその時には手遅れだった・・・身近に起こり得る話です。

感動的なラストシーン。

「俺には親もいないだろ、金もないし学歴もないし資格もないし将来もない。希望なんてもう思いっきりなくなってて。だから尚が病気だなんて屁でも何でもない。尚が、がんでもエイズでも、アルツハイマーでも心臓病でも、腎臓病でも糖尿病でも、歯周病でも中耳炎でも、ものもらいでも水虫でも、俺は尚と一緒にいたいんだ。」

告白する尚

「いずれ真司のことも誰だか分からなくなるかもしれない」と言い放っているにも関わらず、「尚が病気だなんて屁でも何でもない。」ときっぱりと言い切る真司。不安で押し潰されそうだった尚は、どれほど安堵したことでしょう。ムロさんが、イケメンではないだけに(大好きです!)妙にリアルでうるっときました。

『大恋愛〜僕を忘れる君と』の期待の第3話は今夜、22時から放送です。

ところで、真司が予約したレストラン、前日も尚は母親と来ていましたよね。あれは覚えていたんでしょうか・・・気になります。