TBSドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』第8話

TBSドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』第8話についてお話ししていきたいと思います。
先日、ドラマは終了してしまいましたが、「アルツハイマー型認知症」という視点からお送り致します。
放送をご覧になっていない方のためにも、まずは第8話のあらすじから。

『大恋愛〜僕を忘れる君と』第8話あらすじ

尚(戸田恵梨香)に、「別れよう」と伝えた真司(ムロツヨシ)。
だんだんと病状が進行していく尚(戸田恵梨香)だったが、悩み抜いて真司(ムロツヨシ)との子どもを産むことを決意した。
産婦人科医である尚は、子どもを身ごもるための戦略を実行し、幸せな日々。
一方、侑市(松岡昌宏)は、診察に訪れた公平(小池徹平)に尚のスピーチのときの映像を見せ、ほかの患者に危害を加えるならばほかの医師を紹介すると注意するが、公平は了承せず…。
そんな中、尚は薫(草刈民代)に子どもを産むことにしたと報告に行く。
子どもには断固反対していたはずの薫だったが、すんなりと受け入れた様子を見て、尚と柚香(黒川智花)は“好きな人でもできたのでは!?”と勘ぐる。
その帰り道、スーパーで買い物をしていた尚の前に公平が現れて、何も知らない尚は…。
本の売れ行きが好調な真司は取材が殺到し、担当編集者の水野(木南晴夏)がかいがいしく世話を焼いていた。
尚が自宅に帰ると、玄関にハイヒールがあり、部屋から出てきた水野と鉢合わせしてしまう…。

というのが、第8話のあらすじです。

第8話で、わたしが気になったこと

家の付箋が増えてきています。
目覚まし時計を掛けたことを忘れてしまったり、梅干しおにぎりと言いながら白おにぎりだったりと毎日のお決まりの行動すら尚は単独で行えることが難しくなっています。

わたしはよくこの質問をします。
認知症と聞いて、どのようなイメージをもちますか?

「物忘れでなくて完全に忘れて思い出せなくなる」

「食事をしたことも忘れる」

「トイレ(排泄)が心配」

多くの方がそのようなことを言われます。
確かにそうなのですが、それらに関連づいた、身近なすべてを奪う病気であることに気付いている人は多くはありません。

  • 完全に忘れる
    日中と夜の違いも、ガスの点け方も家族も、言葉も忘れてしまいます。
    当初は親せきや知人が様子を見に来てくれるかもしれません。ですが、言葉を上手く話せなくなり、やがて言葉を忘れ単語すら発しなくなる頃には、お見舞いに来る人はほとんどいません。
  • 食事をしたことも忘れる
    そこにあるのが箸であることも分かりません。
    半側空間無視∗という症状が現れて目の前のおかずやご飯がしっかりと見えません。
    その内に食事に対して目の焦点を合わすことができなくなります。あなたの家族が目を見つめてもあなたはそれを理解できないのです。
  • トイレ移動
    認知機能が低下し始めると下着を汚すことを恐れ、かつトイレに行ったことを忘れて数分毎にトイレへ行こうとします。
    なだめても理解できないことが多いため一緒に外出することが難しくなってきます。

半側空間無視とは?

本人の視力が弱まっているわけではなく、見えているはずが「気がつかない」という症状です。
多くは脳の右半球の損傷で起こるようで、その場合は左側の空間に気がつかない、ということになります。
見えてはいるのですが、左側注意が向きにくくなり、傷ついた脳の反対側の物や人にぶつかったり、見落としたりする事があり危険な場面も出てきます。

進行していく症状、苛立ち、戸惑い

侑一と薫の会話にこんなものがありました。
「医者は、本当に人の役に立っているのかと思います。どうしてこの病気を専門に選んでしまったのか、考えてしまいます。」と言った侑一に対して、「尚には間に合わなくても、たくさんの患者さんには間に合います。」と、薫は答えました。
彼らは悲しくも医師で、アルツハイマー型認知症をコントロールできる未来はまだそこにはないことを分かっているのです。それを、誰よりもわかっていながら、アルツハイマー型認知症に罹ってしまった大切な人を見守らなければならない…彼らにとっても辛いことでしょう。

真司が、尚のために購入した一戸建て。
作家として売れた真司に、かいがいしく世話をする担当編集者の水野が出入りしています。
真司の部屋から、担当編集者の水野との話し声が漏れ、続編のタイトルを「もう一度、第1章から」にすると話しているのを尚は聞いてしまいます。

「続編のタイトルだって、最初に私に教えて欲しかったのに!」尚は真司に思いをぶつけます。
ですが、真司は約束通り、尚に一番に伝えていたのでした。
「言ったんでしょうよ。そんな大事なことだって忘れちゃう。あの人とは対等なのに、私とは対等じゃないんだもん!」
一番に伝えてもらっていたことを思い出すも、タイトルがどうしても思い出せない。
私は真司と対等ではない…。

アルツハイマー型認知症は、少しずつ進行していきます。
周囲の人間も戸惑いますが、当人が、変わっていく自分に一番戸惑い、苛立ち、不安に押し潰されそうになるのでしょう。
この回の尚は、そういった心情がよく伝わってきました。
いつか、そういった感情さえも失っていくのかと思うと胸が苦しくなってしまいます。

そういえば、尚が公平に借りたスーパーのお会計、返してないですよね?
公平も覚えていないかもしれませんが…。